2007年 10月 11日
奈良で仏像を観よう!②斑鳩の里
この文章、写真ないといまいち盛り上がりませんよね…。
すみません。脳内旅行なもんで…。 来週、関西に行ってきますんで、 そのときには写真満載でお送りします。 お楽しみに!! ということで、二日目。 明日香村の次に行きたいのは斑鳩の里です。 斑鳩の里、というのは、聖徳太子の宮があったところで、 判りやすく言えば法隆寺のあるあたりです。 法隆寺といえば、世界最古の木造建築であり、 世界文化遺産に早々と登録されたところ。 いまだに法隆寺には1300年以上前から連なる 「法隆寺宮大工」という職分の方々が居り、 1300年続く木造建築を守りつないでいます。 さて、二日目にこの地域を回るというのは、 建造物だけでなく言わずもがな、 飛鳥から奈良時代にかけての すばらしい仏像を一気に観られるからです。 法隆寺→中宮寺→法輪寺→法起寺の順序でまわります。 ①法隆寺 JR法隆寺駅からバスで行きましょう。 斑鳩の里は歩き回るのがお勧めですが、最初のとこだけはバスでいいです。 そこまではショートカットして体力温存しましょうね。 さて、法隆寺ですが、実は建造物自体は670年に一度焼けてまして、 それ以降の再建のときのものなので、聖徳太子が建てたものじゃありません。 でも仏像はもっと古いものがちゃんと残ってますからね。 安心してくださいね! 法隆寺というのは、かなり大きなお寺さんです。 西院伽藍、東院伽藍からなっています。 西院伽藍には日本最古の仁王像のある中門、 エンタシス柱のある回廊、 聖徳太子を写したという釈迦三尊像と日本最古の四天王像のある金堂、 いかにも「法隆寺」なものがあるのはこの地域。 東院伽藍は、有名な六角形の建物・夢殿がある地域です。 この二つをまわるためには、最低でも2時間はかかりますね。 あまりにも国宝・重要文化財の多いお寺さんなので、 じっくりゆっくり行きましょう。 建造物や石造物、工芸品まで含めて語ろうとするとそれだけで エライ量になっちゃうので本稿ではあくまでも仏像の話だけ。 法隆寺で見逃してはいけないのは、 釈迦如来三尊像(金銅製・飛鳥時代)@金堂 百済観音(樟製・飛鳥時代?)@百済観音堂 秘仏・救世観音像(樟製・飛鳥時代)@夢殿 とにかくこの三仏でしょうか。 他にも死ぬほどたくさんあるんですけど、 この三仏は桁外れに素晴らしいのですね。 まず釈迦三尊像(写真)、この仏像は前回ご紹介した飛鳥寺の 飛鳥大仏と非常によく似た作風です。 それもそのはず、この像は鞍作止利仏師の作。 杏仁型の目、アルカイックスマイル。まさに北魏風の様式で 止利仏師ならではです。 そして百済観音。 この観音さんは、本当に不思議な観音さんです。 非常に体が薄く長身。筋肉などまるで感じさせず、現実感に乏しいのに、 間違いのない存在感。まさに天人の相を現した名作と言えましょう。 百済伝来といわれますが、こういうスタイルのものは彼の地にもなかなかないようなので、 百済系の渡来人の仏師が日本で作ったものなのかもしれませんね。 最後に秘仏・救世観音(特別開帳は10月22日から11月22日まで)。 これは以前にもお話しましたが、法隆寺の絶対秘仏だった仏像です。 聖徳太子の死後、太子の後継者だった山背大兄王のとき、 上宮王家(かみつみやおうけ)と呼ばれた彼ら一族は、 蘇我蝦夷・入鹿の陰謀によって、自死を選び、全滅します。 この仏像が納まっている夢殿は、 上宮王家の邸宅跡に彼らを弔う目的で寺院になおされたと言いますから、 太子がなくなった後何らかの目的でつくられ、 その後、上宮王家の鎮魂のため祀られたと見ていいでしょう。 様式としては、北魏風のシンメトリーに様式化された袈裟や裳、 杏仁型の目、アルカイックスマイルの、いかにも飛鳥仏ですが、 あまりに写実的な相貌の表現は、かなりの異相です。 哲学者・梅原猛さんは「まるで水死体のような」とその「不吉」さを断じ、 聖徳太子が実は毒殺された証左として指摘しました。 そこまで不吉と思うかは感性の問題でしょうが、 飛鳥仏の特徴を考えると、確かにおかしな像です。 必要以上にリアルなんですよね。 「これだけの像を作った製作者、完成と同時死んじゃったんじゃないの?」 とはじめてみたとき思いましたよ。 それくらいとてつもないレベルの仏像だと思います。 好き嫌いで論じるレベルは超えている像ですね。 いやあ、まだ法隆寺の一部しかまわってないのに、 こんなに書いちゃったわあ。オソロシ~! ②中宮寺 さて次はお隣の中宮寺に行きましょう。東院伽藍のすぐ横です。 中宮寺にはあまりにも有名で 可憐な弥勒菩薩半跏思惟像があります。 飛鳥時代後期の作。木造です。 さて「弥勒菩薩」ですが。 この菩薩さんは「未来仏」とも呼ばれる菩薩さんです。 ものすごく大雑把に説明しますと、 仏教世界には菩薩さんと如来さんが居ます。 菩薩さんは「成仏(悟り)を求める修行者」のことで、 如来は「真如から来たもの、成仏した(悟りをえた)もの」ということです。 そんなわけで、菩薩さんは如来になるべく修行中なわけなんですが、 一番最近如来になったのはおなじみ ゴーダマ・シッダールタこと釈迦如来さんですが、 その次に如来になると予言されているのがこの弥勒菩薩さんなんです。 ちなみにそれはいつかというと釈迦如来入滅してから56億7千万年後。 #……と、遠すぎる~。 仏教にも流行というものがありまして、 6・7世紀ごろの朝鮮では、この弥勒菩薩信仰がとても流行してました。 特に新羅ではこの信仰が盛んで、 このスタイル(半跏思惟像)の仏像がたくさん作られました。 それが日本にも伝わったと考えられます。 この中宮寺の弥勒菩薩さんもそもそもはその流れでしょうけど、 ずいぶん可憐で女性的な解釈でもって表現されています。 おそらく新羅本国ではなく、日本で作成されたものではないかと思います。 この中宮寺は尼寺ですから、それにふさわしい優しげな像ですね。 さて次は法輪寺です。 (続く)
by ichimorimube
| 2007-10-11 02:17
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